原田年晴 原田年晴 かぶりつきサーズデー!フライデー!
「展覧会へ行こう」

第5回(放送日:2024年9月26日)
「開館3周年記念特別展 TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」

「開館3周年記念特別展 TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」 「開館3周年記念特別展 TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」

#ラジオ大阪連動企画

3つそろえば、新たな視点。
美術史上初の!?展示手法を用いた展覧会

2025年2月に開館3周年を迎える大阪中之島美術館。これを祝して開催されるTRIO展では、パリ・東京・大阪の3館のコレクションの中から、共通点のある3作品を“トリオ”として並べて展示。これまでにないユニークな展覧会の見どころを原田年晴が主任学芸員の高柳有紀子さんにインタビューしました。

「原田年晴 かぶりつきサーズデー!フライデー!」
(木曜・金曜 午後2:00~午後4:55)

パーソナリティ:
ラジオ大阪アナウンサー 原田年晴

身近な話題から旬の情報まで、鉄道大好き&旅大好きな原田年晴がお届けする「かぶりつき」で聴いてほしい175分の生放送。新しくスタートした特別企画「展覧会へ行こう」では、原田年晴が美術館ビギナーさんにもわかりやすく見どころを紹介しています。週末はアクティブな気分で、美術館に出かけてみませんか?

心に残る作品にきっと出会える
3館の豪華競演

原田

原田

今回は、パリ・東京・大阪の美術館から名品が一堂に会するという、いまだかつてない展覧会!いずれも大都市ですが、パリにはセーヌ川が流れ、東京には皇居の周りにお堀があり、大阪には中之島を挟んで2つの川が流れています。なんだか都市としても共通しているところがあるように私は感じたのですが、今回の展覧会の趣旨は、ズバリどのようなところにあるのでしょうか?

高柳

高柳

展覧会の趣旨としては、この3館のコレクションを楽しんでいただくことにあります。

それぞれに特徴のある美術館ですが、いずれも近代から現代にかけての作品を収集の対象としているところが共通点。

今おっしゃっていただいたような3都市の比較や気づきなども、副次的な要素として楽しんでいただけます。

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原田

原田

展示物も絵画、彫刻、写真、ポスター、映像、さらには家具まであって、本当に見応えがあります。

ここへ来れば、これまであまり関心を持っていなかったものまで興味をもって楽しめそうです。

高柳

高柳

それがまさに意図したところです!

3館とも多彩なジャンルのコレクションを所有していて、出品している作家も非常に多いので、きっと心に響く作品に出会えると思います。その記憶とともに、美術館と美術館のコレクションに親しんでもらえればうれしいです。

漫画家・にしうら染さんによる
わかりやすい美術館紹介も!

TRIO展のためだけに書き下ろされた3つの美術館紹介イラストをパネルで展示。美術館も“トリオ”で見比べてみてください。

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  • パリ市立近代美術館

    シャンゼリゼ通りとエッフェル塔の間に位置するパリ市立近代美術館の宮殿は、1930年代の壮麗な建築の一例。15,000点以上の作品を所蔵するパリの重要な文化施設であり、フランス最大級の近現代美術館のひとつ。

    https://www.mam.paris.fr/en

  • 東京国立近代美術館

    東京の中心・皇居のお濠を前に建つ日本で最初の国立美術館。最大の特徴は、横山大観、上村松園、岸田劉生らの重要文化財を含む13,000点を超える国内最大級のコレクション。19世紀末から現代までの幅広いジャンルにわたる日本美術の名作を、海外の作品もまじえて多数所蔵。

    https://www.momat.go.jp/

  • 大阪中之島美術館

    2022年、大阪市中心部に開館。19世紀後半から今日に至る日本と海外の代表的な美術とデザイン作品を核としながら、地元大阪で繰り広げられた豊かな芸術活動にも目を向け、絵画、版画、写真、彫刻、立体、映像など多岐の領域にわたる6,000点超を所蔵。

    https://nakka-art.jp/

アート初心者でも
見て、比べて、楽しめる

原田

原田

まずプロローグとして展示されているのが、「コレクションのはじまり」というトリオです。
人物が椅子に座っている絵が並んでいるので、テーマは椅子かと思いましたが違うんですね。

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原田

高柳

こちらは3館のコレクションが形成される礎となった作品をトリオにしています。当館では、佐伯祐三の作品群が寄贈され、美術館構想のきっかけとなったことから、佐伯祐三の最晩年の作品である《郵便配達夫》を展示しています。

同じように、パリからは開館の契機をつくった作品、東京からは最初の購入作品の一つが登場しています。

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高柳

高柳

この3点を「コレクションのはじまり」として冒頭に展示しているのは、本展がコレクション展であることを表すのと同時に、最初期の作品をきっかけにコレクションの歴史がはじまり、それが3館の特徴となっていったことを象徴的に示したいという思いがあったためです。

高柳

高柳

また、椅子の印象が強く残られたと思うのですが、あえてそのように構成していてまさに狙い通り!

歴史や文脈を知らなくても、3点を見たときに「どこが似てるんだろう?」と、見て、比べて、楽しんでもらいたいという意図があります。

3人の学芸員が1年以上かけて議論
なかには奇跡的に成立したトリオも!

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原田

原田

パリ・東京・大阪、3館のコレクションから1点ずつ選んでトリオを組むのは大変だったでしょうね。

高柳

高柳

そうなんです。パリ・東京・大阪の3人の学芸員が1年以上も試行錯誤を続けました。

全員一致ですぐに決まったものもありましたが、そういったものは少なくて。2点はとてもいいけれど、3点目が決まらない…!というトリオはかなりたくさんありました。

原田

原田

一番大変だったのはどのトリオでしたか?

高柳

高柳

「人物とコンポジション」というトリオですね。

パリと東京の作品は実によく調和していましたが、当館から出せる作品がなかったんです。そこで東京国立近代美術館の日本画を出しましょうという話になり、トリオがなんとパリ・東京・東京になってしまうという状況に…!

しかし、直前になって当館で新しい作品を購入することが決まり、その候補の中にこのトリオのテーマにぴたりとはまる作品があったんです。これだ!と思い、ギリギリでトリオへの追加が間に合いました。

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原田

原田

本当にうまく調和していますよね。日本の掛け軸の横にパリの作品が並んでいるのですが、パリの作品が掛け軸に見えてくるほどです!

作品の構図や色使いなども共通点
自由に想像しながら見てみよう

高柳

高柳

「女性たちのまなざし」というトリオもパリと東京の作品が合いすぎていて、大阪からの作品をどれにするか非常に悩んだ作品です。最終的に色使いや印象が異なる作品になったのですが、それが結果としてエッセンスとなり、よかったと思います。

原田

原田

なるほど、作品の色合いなどにも共通点を見出していらっしゃるんでしょうか。

高柳

高柳

はい。必ずしも主題や登場人物、構図が似ているというだけではなく、色使いや形などの調和も考慮して選んでいます。テーマによく合っていても、見た目が調和しないので変えた作品もありました。

原田

原田

やはり、ほかの展覧会とはまったく異なりますね。

来場された皆さんが、それぞれ好きなように感じていただくということでいいのでしょうか?

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高柳

高柳

はい。アート初心者の方でも共通点を探してワイワイ楽しんでいただけるように構成していますので、自由に想像を広げて気になるところを見つけてもらえたらと思います。

本当にバラエティに富んでいるので、必ず感性に引っ掛かる作家や作品が見つかるはずです!

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学芸員・高柳さんの推しトリオは?

高柳

高柳

一つ挙げるとするなら、ポスターのビジュアルにもなっている「現実と非現実のあわい」。

このトリオは、いずれも過去の絵画を参照し、画家が自らの分身のような存在を描き込むことで、現実と非現実のあわいを出現させています。

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高柳

高柳

特に面白いのが、初来日のヴィクトル・ブローネル《ペレル通り2番地2の出会い》。

アンリ・ルソーの《蛇使いの女》をオマージュした作品に、巨大な頭部と2つの身体、6本の腕を持つ怪物「コングロメロス」を登場させています。これがインパクト抜群!これからどんどん注目されていくのではないかと期待しています。

視点はみんなバラバラでいい!
ここには美術本来の自由な楽しみ方がありました

原田

原田

パリ・東京・大阪、3つの都市を美術で結ぶことで、新しい見方を発見できたトリオ展。楽しみ方も人それぞれでいいというところに、これまでの展覧会との大きな違いを感じました。

「美術って本来は自由なもんや!」「感性で楽しんでええんや!」と思わせてくれる魅力がこの展覧会にはあるような気がします。

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原田年晴チェック

強烈な存在感を放つ作品がクッションに

特設ショップではTシャツやステッカーなどセンスあふれるグッズが充実。特にインパクトがあったのが、コンスタンティン・ブランクーシの《眠れるミューズ》のクッション。モチモチとした触り心地で、いい夢が見られるかも…!?

強烈な存在感を放つ作品がクッションに
開館3周年記念特別展TRIO パリ・東京・大阪
モダンアート・コレクション
  • 会期2024年914日(土)〜128日(日)
  • 会場大阪中之島美術館 4階展示室
  • 開場時間10時~17時(入場は16:30まで)
  • 休館日月曜日 ※ただし、10/14、11/4は開館、翌火曜日休館

https://art.nikkei.com/trio/

TRIO パリ・東京・大阪